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Waymo、週50万回乗車を突破——3000台のロボタクシーが描く「移動の自動化」の現在地

この記事のポイント

2026年3月下旬、Waymoが公表した数字がちょっとした衝撃を与えた。週あたりの有料乗車回数が50万回に到達したのだ。2024年5月にはわずか5万回だったこの指標が、2年足らずで10倍。率直に言えば、自動運転に懐疑的だった人間の一人として、この伸び方は予想外だった。


数字が語る急成長の実態

まず事実を整理しておこう。

Waymoの週間有料乗車回数は、2024年5月時点で約5万回。2025年4月に25万回を超え、そこから1年弱でさらに倍増して50万回に達した。年末までの目標は100万回。フリート(車両数)は約3000台で、NHTSAへの報告によれば第5世代の自動運転システムを搭載している。

ここで気になるのは、車両台数がほぼ横ばいのまま乗車回数が伸びている点だ。単純に台数を増やしたのではなく、1台あたりの稼働率が着実に上がっていることを意味する。配車アルゴリズムの最適化やサービスエリア内の需要密度が高まった結果だろう。


10都市に広がるサービス網

当初はフェニックス、サンフランシスコ、ロサンゼルスの3都市でサービスを提供していたWaymo。過去1年で一気に7都市を追加した。オースティン、アトランタ、マイアミ、ダラス、ヒューストン、サンアントニオ、オーランド——いずれもサンベルト地帯の都市ばかりだ。

この地域選定には明確な理由がある。降雪が少なく、道路のレイアウトが比較的シンプルで、自動運転のセンサー類にとって条件が良い。東京やロンドンなど20以上の都市での展開準備も進んでいるとされるが、雪や複雑な路地が絡む市場でどこまで通用するかは、まだ未知数というのが正直なところだ。


Uberの背中はまだ遠い

50万回という数字は確かにインパクトがある。しかし文脈を忘れてはならない。Uberが2025年に処理した乗車は約135億回。週換算で約2億6000万回だ。Waymoのシェアはまだ0.2%にも満たない。

ただし、比較の仕方を変えると景色が違ってくる。Uberが同規模の週間乗車数に到達するまでには、サービス開始から数年を要した。しかもUberの場合はドライバーの確保というスケーリングのボトルネックが常につきまとう。Waymoには「ドライバー不足」という制約がない。車両の製造と配備さえ追いつけば、理論上は指数関数的に拡大できる。

2026年後半にはZeekrのバンとHyundai Ioniq 5がフリートに加わる予定で、これまで主力だったJaguar I-PACEからの世代交代が始まる。車両の多様化は、サービスの用途拡大にも直結するはずだ。


ビジネスとしての持続性はどうか

個人的に最も関心があるのは、このビジネスが黒字化できるのかという点だ。Alphabetの傘下でこれまで莫大な投資が続いてきたWaymo。車両1台あたりのセンサーコスト、遠隔監視オペレーターの人件費、保険料——収益構造の詳細は公開されていないが、黒字化のハードルが高いことは想像に難くない。

一方で、稼働率の向上は収益性改善に直結する。50万回を3000台で割ると、1台あたり週167回。1日約24回の乗車をこなしている計算だ。人間のドライバーが1日10〜15回程度であることを考えると、すでに稼働効率では上回っている可能性がある。

安全性に関しても、Waymoは2025年12月の年次レビューで事故率の低さをアピールしている。もっとも、サービス提供都市のほとんどが気候・道路条件に恵まれたサンベルト地帯であることは差し引いて考える必要がある。


移動の自動化がもたらす波紋

ロボタクシーの普及は、単なる「タクシーの無人化」にとどまらない影響を及ぼしうる。

真っ先に浮かぶのが雇用の問題だ。米国のライドシェアドライバーは推定で数百万人規模とされる。Waymoの現在のシェアは微小だが、もし年末に100万回/週を達成し、さらに数年で10倍になれば、雇用への影響は無視できなくなる。

都市の姿も変わるかもしれない。自動運転車が24時間走り続けるなら、駐車場の需要は激減する。都市中心部の駐車スペースを住居や緑地に転用する議論が、すでにいくつかの都市で始まっている。

そして保険業界。ドライバーがいないクルマの事故責任は誰が負うのか。製造者責任なのか、ソフトウェア提供者の責任なのか。法的な整備はまだ追いついていない。


まとめに代えて

週50万回という乗車回数は、自動運転が実験の域を完全に抜け出したことの証だ。一方で、Uberとの規模の差を見れば、「当たり前の移動手段」になるまでの距離感もはっきりする。

個人的に注目しているのは、2026年後半に予定されている東京でのサービス開始準備だ。日本の狭い路地、複雑な交差点、歩行者・自転車の多さ——サンベルト地帯で磨いた技術がどこまで通用するか。そこが本当の試金石になるだろう。


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