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Meta、1.5万人解雇で「AIネイティブ」企業へ——コードの75%をAIが書く組織の現実

この記事のポイント

Metaが静かに、しかし大胆に変わっている。2026年に入り、同社は約1万5000人——全従業員の約20%——の削減を進めている。対象はソフトウェアエンジニア、採用担当、ミドルマネージャーだ。同時にZuckerbergは「AIネイティブ企業」への転換を宣言し、エンジニアに対してコードの75%以上をAIで生成する目標を課している。

Atlassian、Block、Oracle——AI転換を掲げたリストラが続く中、Metaのアプローチはひときわ踏み込んでいる。人を減らしながら、残った人員にAIの使用を義務化する。これは単なるコスト削減ではなく、組織の設計思想そのものを書き換えようとしている。


何を、どれだけ削減するのか

まず数字を確認しておく。

Metaは2023年の「効率化の年」で大規模なリストラを行い、その後は採用を再開していた。今回はその第二波で、削減規模は15,000人前後とされる。ワシントン州だけで168人の解雇が確認されており、削減は全世界のオフィスに及んでいる。

対象として名指しされているのはソフトウェアエンジニア、採用担当、そしてミドルマネジメントの三層だ。ここには一定のロジックがある——AIが担える仕事の範囲が広がった領域、あるいはAIを大量導入すれば中間管理層が必要なくなると判断された層が標的になっている。


「コードの75%をAIで書け」という目標

注目すべきはリストラの規模よりも、残った社員への要求だ。

Metaが社内に設定した目標によれば、FacebookやWhatsApp、Messengerを担当するCreation部門では、エンジニアの65%が自身のコードの75%以上をAIで生成することが求められる。スケーラブルな機械学習インフラを構築するチームでは、AI活用率の目標は50〜80%とさらに幅広い。

ツールはGemini、DevMate、Metamateの3つが主に使われる。DevMateはコーディング支援に特化した社内ツール、MetamateはMeta全体の業務効率化を担う内製AIプラットフォームだ。この2つはMeta社員向けに開発されたものだが、将来的には外部企業向けにライセンス提供する可能性も浮上している。


「AI活用インパクト」が昇進条件に

もっとも踏み込んでいる変化は、人事評価への組み込みだ。

2026年から、Metaの全社員はパフォーマンスレビューで「AI活用インパクト」という基準で評価される。AIを使っているかどうかではなく、AIを使ってどれだけ成果を出したかが昇進・昇給の条件になる。「AIを使わない人は出世できない」——これを明文化した大手テック企業はMetaが最初だ。

この施策の意図は明確だ。AIを「使えるツール」から「使わなければならないインフラ」に昇格させることで、組織全体のAI定着率を強制的に引き上げる。Zuckerbergは「AIネイティブ企業」という言葉を繰り返しているが、その実装がここに来て本格的に動き始めた。


削減と投資の二重構造

リストラを進めながら、Metaは同時にAIへの投資を拡大している。

2026年4月初旬、MetaはNebius Groupとの5年契約を発表した。NvidiaのVera Rubinプラットフォームを使ったGPUクラスターの提供で、契約総額は270億ドルに達する。Microsoft、Amazon、Alphabet、Metaの4社合計のAIインフラ投資額は2026年に6350億ドルに上るとも試算されている。

人件費を削って、その分をコンピューティングに回す——この図式はAtlassianやOracleでも見られたが、Metaの規模はより大きく、実行のスピードも速い。


「AIネイティブ」は本当に機能するのか

率直な疑問を言えば、「コードの75%をAIで書く」という目標が実際に機能するかは未知数だ。

AIによるコード生成は、反復的なタスクや定型処理では効果的だ。しかし、複雑なシステム設計やバグの根本原因究明、新機能の構造的な判断などは、まだ人間の思考が必要な場面が多い。75%という数字が何を指すのか——行数なのか、ファイル数なのか、時間なのか——によっても意味は大きく変わる。

また、「AIが書いたコードをレビューする」スキルは「コードをゼロから書く」スキルとは違う。人員を削減しながらAI依存度を高める組織が、AIの誤りを適切に検出・修正できる人材を十分に保つことができるかどうかも問われる。


大波の正体

今起きていることを一言で言えば、「AIが十分に使えるようになった企業が、組織のデフォルトをAI前提に書き換え始めた」ということだ。

Metaのケースが特に際立つのは、その徹底度にある。ツールの導入に留まらず、人事評価、昇進基準、採用抑制、そして大規模な人員削減までをひとつの戦略パッケージとして打ち出している。成功すれば「AIネイティブ大企業」の最初の証明事例になる。失敗すれば、急進的なAI賭けが組織文化を壊した例として記録されるだろう。

その答えが出るのは、おそらく1〜2年後だ。


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